MITセミナー予定表 2006年度


連絡先:齊藤圭司(saitohあっと spin.phys.s.u-tokyo.ac.jp)、島田尚(shimada あっと ap.t.u-tokyo.ac.jp)
宮下研究室伊藤研究室(セミナー)|藤堂研究室羽田野研究室 (セミナー)
セミナーは原則として、木曜日15時ごろから、理学部1号 館431号室にて行います。

これからのセミナー

日時 講演者 講演題目

これまでのセミナー

日時 講演者 講演題目
4月13日 宮下精二 横磁場イジング模型のダイナミックスと相転移
4月20日 伊藤伸泰 非平衡現象の計算統計力学
4月27日 齊藤圭司 Circuit QEDにおける非自明な非断熱量子トンネル
5月11日 Chin-Kun Hu(Academia Sinica) 第3回物理工学科教室談話会
Numerical Simulation of Protein Folding and Unfolding
工学部6号館大会議室(103号室)場所が変更になりました。
5月18日 星健夫(東大院工) クリロフ部分空間理論と超大規模電子構造計算
5月25日 藤堂眞治 擬一次元磁性体の臨界温度とユニバーサリティ
6月1日 島田尚 前立腺癌の間欠的ホルモン療法の数理モデルによる解析
6月15日 肘井敬吾 量子スピン梯子系の相転移
6月22日 田崎秀一(早稲田大理工) 量子接合系の非平衡状態
午後1時から(時間が変更になりました。)
6月29日 渡辺宙志(名大)、小林礼人(中部大) Nose-Hoover熱浴のエルゴード性について
7月6日 内田淳史(拓殖大学) レーザにおける一般化カオス同期と一貫性
午後1時から(時間が変更になりました。)
工学部6号館セミナー室A(場所が変更になりました。)
7月13日 井村健一郎(理研) 単一分子伝導スピントロニクスにおける完全計数統計
7月20日 佐々真一(東大総合文化) ガラス状物質における”臨界現象的”揺らぎの発散
7月27日 多田司(理研 理論物理学研究室) 行列模型と弦理論
7月31日(月) K. Michielsen (Groningen) Event-by-Event Simulation of Quantum Phenomena
いつもと曜日が異なります。
8月7日(月) Christopher Mudry Universal Scaling Relations in Strongly Anisotropic Materials
いつもと曜日が異なります。
10月26日 丸山 茂夫(東大院工機械工学専攻) 単層カーボンナノチューブの熱輸送に関する分子動力学
11月09日 Mark A. Novotny
(Dept. of Physics and Astronomy, Mississippi State U
HPCC Center for Computational Sciences, Mississippi State U)
Hysteresis and Dynamic Phase Transition: simulations and experiments of multilayer magnetic structures
工学部6号館1階大会議室にて
場所がいつもと異なります。
11月16日 Tomio Y. Petrosky(The Univ. of Texas) A PROBLEM OF INFRARED DIVERGENCE IN KUBO FORMULA IN TERMS OF COMPLEX SPECTRAL REPRESENTATION OF LIOUVILLE OPERATOR
羽田野研究室にて
いつもと場所が異なります。
11月30日 高山 一(物性研) 磁場中イジングスピングラスが示すガラス的ダイナミックスに関する計算機実験
12月21日 佐藤 昌利(物性研) バレー法 -虚時間経路積分形式によるトンネル効果の計算法-
1月18日
14:00 - 15:00
いつもと時間が異なります。
Zbigniew Struzik(School of Education, The University of Tokyo) Statistical physics of human heart rate in health and disease
工学部6号館セミナー室Aにて
(いつもと場所が異なります。)
1月18日
15:30 - 16:30
いつもと時間が異なります。
Motohisa Osaka(Institute of Gerontology, Nippon Medical School) Is it possible to predict cardiac sudden death?
工学部6号館セミナー室Aにて
(いつもと場所が異なります。)
1月25日 Moo Young Choi 先生(ソウル大学) stability and collective oscillations in a globally coupled rotors
工学部6号館セミナー室A(367号室)にて

所属が書かれていない講演者は、宮下研、伊藤研、藤堂研の所属です。
過去のセミナー:2005年度2004年度2003年度2002年度2001年度2000年度1999年度

第1回

日時:4月13日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:宮下精二(東大院理)

講演タイトル:横磁場イジング模型の相転移とダイナミック ス

講演要旨:
量子相転移に関する最も典型的なモデルである横磁場イジング模型における磁場 掃引に関するダイナミックスと相転移についてエネルギー準位から考察し、スピ ンの大きさSに対する依存性についても考察する。

第2回

日時:4月20日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:伊藤伸泰(東大院工)

講演タイトル:非平衡現象の計算統計力学

講演要旨:
前世紀の統計物理学は、熱平衡状態でこそ大きな成功を収めたが、非平衡現象の統一的な扱いには至らなかった。しかし計算機シミュレーションの発展と相俟っ て、最近、輸送現象の統一的な扱いと界面構造をはじめとする非平衡構造形成に成功し、非線形非平衡現象への途が開かれつつあるように思われる。一方、計算 統計物理学の質的転換点と考えられるアボガドロ数回の計算は、「伊藤スケーリング」から従来予想されていた2020年代後半から、2010年代前半に前倒 しする可能性が出てきている。  以上を踏まえて、「アボガドロチャレンジ」プロジェクトにアボガドロ後の見通しを付け加えたい。

第3回

日時:4月27日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:齊藤圭司(東大院理)

講演タイトル:Circuit QEDにおける非自明な非断熱量子トン ネル

講演要旨:
従来キャビティーQEDとは、光をキャビティー内に閉じ込めその中を動き回る1原子と光とのダイポール相互作用によってできる量子系及びそのダイ ナミックスを指すのが普通である。しかし最近Yale大学のグループは、それと等価な系を超伝導回路で作る方法を考案し、実際に作成することに成功した。 回路で組まれた系は従来のキャビティーQEDと区別するためにサーキットQEDと呼ばれる。サーキットQEDでは、量子化された調和振動子と2準位系との 強結合が達成されており、またパラメーターの制御性も良いため、従来のキャビティーQEDでは対象外の物理も研究対象となりえ、理論と実験の相補的な研究 が可能になった。特に基本的な物理の研究としては、開放系の基本的なキュービットのダイナミックス、特に デコヒーレンスや外場応答等に対する精密な実験がなされうるという意味で注目に値する。 我々は特に、従来のキャビティーQEDでは扱えなかった、非断熱量子トンネル(Landau-Zenerトンネル)を取り上げる。厳密な解析により厳密な トンネル確率を得ることにより、その特異的な振る舞いを紹介し実験を提案する。

第4回

日時:5月11日(木)午後3時より

場所:工学部6号館大会議室(103号室)場所が変更になりました。

講演者:Chin-Kun Hu(Academia Sinica)

講演タイトル:Numerical Simulation of Protein Folding and Unfolding

講演要旨:
In this talk, I briefly review some developments in numerical studies of structure and folding of proteins. The topics under discussion include: (1) calculation of protein energies by parallel computers [1, 2], (2) parallel tempering simulations of HP-36 [3], (3) calculation of protein volume V and surface area A by analytic equations [4], (4) Go-like model approach to the folding of hbSBD-a protein with 52 amino acides [5], (5) unfolding and refolding of immunoglobulin domain I27 and ubiquitin [6, 7].
References
[1] S. Hayrian, C.-K. Hu, S.-Y. Hu and R.-J. Shang. Multicanonical parallel simulation of proteins with continuous potentials, J. Comp. Chem. 22, 1287-1296 (2001).
[2] F. Eisenmenger, U. H.E. Hansmann, S. Hayryan, and C.-K. Hu. ComputerPhys. Commu., 138, 192-212 (2001) and 174, 422 (2006).
[3] C.-Y. Lin, C.-K. Hu, and U. H.E. Hansmann. Proteins - Structure, Function and Genetics 52, 436-445 (2003).
[4] S. Hayryan, C.-K. Hu, J. Skvrivanek, E. Hayrjan, I. Pokorny. J. Comp. Chem. 26, 334 (2005); J. Busa, J. Dzurina, E. Hayryan, S. Hayryan, C.-K. Hu, J. Plavka, I. Pokorny, J. Skrivanek, and M-C. Wu. Comp. Phys. Commun. 165, 59 (2005).
[5] M. Kouza, C.-F. Chang, S. Hayryan, T.-H. Yu, M. S. Li, T.-H. Huang, and C.-K. Hu, Biophysical J. 89, 3353 (2005).
[6] M.-S. Li, C.-K. Hu, D. K. Klimov, and D. Thirumalai, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 93 (2006).
[7] Mai Suan Li, Maksim Kouza and C.-K. Hu. Biophysical J., submitted.

第5回

日時:5月18日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:星健夫(東大院工)

講演タイトル:クリロフ部分空間理論と超大規模電子構造計算

講演要旨:
近年我々は、超大規模電子構造計算(数千原子から1千万原子系)の基礎理論構築と応用研究を行ってきた[1-3]。 本講演では特に、グリーン関数の新しい計算手法である、「shifted conjugate-orthogonal conjugate-gradient method」 [3]を紹介する(*)。その数理的基礎は、非エルミート行列を用いたクリロフ部分空間理論(シフト型線形方程式における共線残差定理)[4]にある。本手法は汎用数値計算手法であり、その応用は電子系に限らない。 数理的基礎と電子構造計算への応用を紹介し、他分野への応用可能性について論じたい。

(*)共同研究者;藤原毅夫(東大 物工), 高山立(現キャノン),曽我部知広(名大 計算理工), 張紹良(名大 計算理工).

[1]レビューとして、星健夫・藤原毅夫, 日本物理学会誌,2006年4月号,256-259頁; 動画ファイルなど、 http://fujimac.t.u-tokyo.ac.jp/lses/index.html
[2]T. Hoshi, Y. Iguchi, and T. Fujiwara, PRB 72, 075323 (2005).
[3]R. Takayama, T. Hoshi, T. Sogabe, S.-L. Zhang, and T. Fujiwara, PRB 73, 165108 (2006).
[4]A. Frommer, Computing 70, 87 (2003).

第6回

日時:5月25日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:藤堂眞治

講演タイトル:擬一次元磁性体の臨界温度とユニバーサリティ

講演要旨:
純粋な一次元磁性体は、熱ゆらぎのため絶対零度以外では長距離秩序を示さな い。一方、現実の擬一次元物質では、弱い鎖間相互作用の存在により有限温度 で相転移が起こりうる。擬一次元反強磁性ハイゼンベルグ模型については、安 田らにより量子モンテカルロ計算が行なわれ、鎖間相互作用と臨界温度との間 のスピンの大きさによらないユニバーサルな関係式の存在が示唆されている。 本セミナーでは、スピン相互作用がイジング的である場合の解析結果を紹介す る。特に弱結合極限においてはスピンの大きさによらない非自明な関係式が解 析的に厳密に導かれることを示す。

第7回

日時:6月1日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:島田尚

講演タイトル:前立腺癌の間欠的ホルモン療法の数理モデルによる解析

講演要旨:
臨床的知見から、前立腺癌のホルモン療法において、投薬を永続的ではなく間欠的に行うことによって癌の成長を抑えながら腫瘍の悪性化(再燃)を回避または 遅らせられ得る事が示唆されている。このような間欠的療法の有効性やより良い投薬切り替えスキームを検討するためには分子生物学的知見に加えて現象論的な 理論解析が必要である。このような問題意識の元、簡単な数理モデルを用いて解析した結果について発表する。

第8回

日時:6月15日(木)午後3時より

場所:理学部1号館431号室

講演者:肘井敬吾

講演タイトル:量子スピン梯子系の相転移

講演要旨:
近年、高温超伝導やHaldane予想をはじめ、量子ホール効果の edge (端)状態、超流動He液面上の低次元電子系、微細加工技術の進歩による半導体中の低次元電子系の実現など、理論的および実験的両側面から、低次元量子系に興味が持たれている。 低次元量子スピン系は量子力学的に振舞う多体系の最も単純な系のひとつである。低次元系では揺らぎの効果が大きいために、単純な平均場近似が成立せず、摂動論もすぐに破綻してしまう。このために、非摂動論的なアプローチが重要となる。 このセミナーでは、量子スピン梯子系に異方性、および多体相互作用が存在する場合の非摂動論的なアプローチとして、数値的対角化と密度行列繰り込み群(DMRG)を共形場理論と繰り込み群とを組み合わせた研究を紹介する。

第9回

日時:6月22日(木)午後1時より(時間が変更になりました。

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:田崎秀一(早稲田大理工)

講演タイトル:量子接合系の非平衡状態

講演要旨:
無限に拡がる複数の熱浴と結合する量子系の非平衡状態に関するC*代数的 アプローチについて、Ahoronov-Bohmリングを含む量子接合系を例に紹介する。 枠組みを紹介したあと、2体相互作用がない場合について、非平衡定常状態の構成 および諸性質(輸送現象、エントロピー、MacLennan-Zubarevアンサンブルとの 関係など)を論じ、2体相互作用を含めた場合について、非平衡平均場近似を 用いた輸送現象の解析結果について述べる。また、単一の熱浴と相互作用する 系について、熱浴との相互作用が小さい極限の下でクラジウスの不等式/等式 が得られることも示す。

第10回

日時:6月29日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:渡辺宙志(名大)、小林礼人(中部大)

講演タイトル:Nose-Hoover熱浴のエルゴード性について

講演要旨:
Nose-Hoover 熱浴は、系がエルゴード的であるときカノニカル分布を再現する 熱浴であるが、少数自由度系ではエルゴード性を失うことがある。そこで、 Nose-Hoover 熱浴がどのようなときに、どのようにしてエルゴード性を失うの か調べるため、いくつかのハミルトニアンについて数値計算を行った。その結 果、熱浴変数が有界となるためにエルゴード性を失うことがわかった。さらに 熱浴変数の変化に比べ系の運動が十分速いという断熱近似により、熱浴変数の 有界性及び緩和時間依存性を導いた。運動エネルギーの2次のモーメントを同 時に制御する Kinetic-Moments 法についても調べ、熱浴変数が十分カオス的 な振る舞いを示すためにエルゴード的となることもわかった。以上のような考 察から、Nose-Hoover 熱浴によって制御された粒子系は、少数自由度であって もエルゴード的であると期待できる。

第11回

日時:7月6日(木)午後1時より(時間が変更になりました。

場所:工学部6号館セミナー室A(場所が変更になりました。

講演者:内田淳史(拓殖大学)

講演タイトル:レーザにおける一般化カオス同期と一貫性

講演要旨:
 本講演では非線形システムの一例としてレーザに焦点を絞り、そのカオス同期現象 ついて、講演者が近年従事してきた研究を紹介する。
(1) レーザにおけるカオス同期現象
 レーザ特有の物理に基づくカオス同期現象について、マイクロチップ固体レーザを 代表として解説する。一方向光結合したレーザ間において完全カオス同期が観測可能 であり、その条件について述べる。さらにレーザ間における一般化同期 (Generalized synchronization)現象についても述べ、その達成条件について詳細に 解説する。
(2) 非線形システムにおける一貫性(consistency)
 多くの非線形システムは、繰り返し入力された信号(カオス、ノイズを問わず)に 対して一貫性(consistency)のある振る舞いを示す。一貫性とは、初期状態の異なる 非線形システムが、ある信号により繰り返し駆動される場合に得られる非線形システ ムの出力の再現性のことである。非線形システムにおける一貫性は生体システムにお ける情報伝達や流体中のパターン形成などに本質的な役割を示す。本講演ではカオス またはノイズ信号により駆動されたレーザを用いて、実験および数値計算にて一貫性 を定量的に測定し、その条件について詳細に述べる。一貫性とは一般化カオス同期の 拡張概念であり、カオス同期よりもさらに普遍性の高い概念だと考えられる。

第12回

日時:7月13日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:井村健一郎(理研)

講演タイトル:単一分子伝導スピントロニクスにおける完全計数統計

講演要旨:
単一分子ナノエレクトロニクスの研究は、量子ドットの物理を超えて更なる 展開を見せている。そのひとつの方向性に分子の持つ固有のスピンに着目した単一分 子スピントロニクスがある。分子を介した電子のトンネル現象がインコヒーレントに 起こる領域では、マスター方程式を用いて完全計数統計を定式化できるが、今回はこ れを電流と電荷の同時確率分布に一般化し、角運動量の合成則を援用して、解析的な 結果を得た。

第13回

日時:7月20日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:佐々真一(東大総合文化)(岩田真実さんとの共同研究)

講演タイトル:ガラス状物質における”臨界現象的”揺らぎの発散

講演要旨:
「Soft-glassy system」あるいは「Jamming system」と呼ばれる系に 関して、非自明で新しく刺激的な知見が急速に蓄積されている。その うちのひとつが、今回のセミナーの主役であるχ_4 である。
例えば、密度場の時間相関関数C(r,t)は、時間に関して指数関数的に減衰する のでなく、緩和が途中でとまってしまうかのような振舞い(非エルゴ ード転移)を示す系がある。このような異常な振る舞いは、20年近 く前に認識され、理論、数値実験、実験ともに研究がすすんできた。
非エルゴードー転移について、難問は難問としてずっと残っているが、 この数年で焦点があたりつつあるのは、C(r,t)=<ψ(r,t)> とあらわす ときの、
   G_4(r,t)=<ψ(r,t)ψ(0,t)> -<ψ(r,t)><ψ(0,t)>
の異常な振る舞いである (最新論文の情報は含まれないが、文献[1]が 入門的に思える。)このG_4(r,t) あるいはそのフーリエ変換のχ_4(k,t) は、非エルゴード転移点において、相関長や振幅の発散など、臨界現 象におけるχ(k)と似た様子を示すことが示唆されているのである。
現在までに、これらの現象に関する理論的アプローチとしては、モード 結合理論(MCT)がもっとも信頼されている。しかしながら、MCT では理論 として「ブラックボックス的な構造」になっており、数値積分の結果と して現象の説明ができても、現象の機構を抽出するのが難しい。
私たちは、この問題に対して、新しい理論的方向をうちだしたい。まず、 もっとも素朴に、時間相関関数に対して、揺らぎを単純に無視する近似に おいても非エルゴード転移を記述できることを、力学系の縮約理論をつか って説明する [2] 。その立場では、非エルゴード転移は、適切な秩序変 数のサドル接続分岐になる。
次に、ψ(r,t)の揺らぎを記述する経路積分表式から、その秩序変数のサ ドル接続分岐近くでの揺らぎを解析する [3]。仮想時間を導入して、経 路積分表示(時空測度)をその仮想時間についての定常分布として与える 確率過程を考えることにより、サドル接続分岐近くの振る舞いを時間方向 へのキンク解の振る舞いに帰着できる。そこで得られたキンク解の統計的 性質を、レベルセット理論と同様な手法によって、もとの問題の統計的性 質に戻し、系統的な近似の最低次の結果としてχ_4 (k,t)の各種発散を導 くことができることを紹介する。

参考文献
[1]C. Toninello et al, Phys. Rev. E 71, 041505 (2005).
[2]M. Iwata and S. Sasa, cond-mat/0605049
[2]M. Iwata and S. Sasa, cond-mat/0608*** 投稿準備中。


http://kamuy.c.u-tokyo.ac.jp/~sasa/MIT.html

第14回

日時:7月27日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:多田司(理研 理論物理学研究室)

講演タイトル:行列模型と弦理論

講演要旨:
(ランダム)行列模型はこれまで数理科学の様々な場面で活用されて来た。このセミナー では、そのうちの一つとして、2次元量子重力および弦理論で行列模型が果たす役割を中 心に解説する[1,2]。ここで特筆すべきは、行列模型を用いることによって、非摂動的取 り扱いが可能になることであるが、行列模型の非摂動的側面についても簡単に紹介したい [3]。

References
[1]For a comprehensive review: P. Ginsparg, Gregory Moore,"Lectures on 2D gravity and 2D string theory (TASI 1992)," http://xxx.yukawa.kyoto-u.ac.jp/abs/hep-th/9304011
[2]For a review including string theory: J. Polchinski, "What is String Theory," http://xxx.yukawa.kyoto-u.ac.jp/abs/hep-th/9411028
[3]M. Hanada, M. Hayakawa, N. Ishibashi, H. Kawai, T. Kuroki, Y. Matsuo, T. Tada, "Loops versus matrices: The Nonperturbative aspects of noncritical string," http://ptp.ipap.jp/link?PTP/112/131

第15回

日時:7月31日(月)午後3時より (いつもと曜日が異なります。)

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:K. Michielsen(Groningen)

講演タイトル:Event-by-Event Simulation of Quantum Phenomena

講演要旨:
Recent advances in nanotechnology are paving the way to attain control over individual microscopic objects. The ability to prepare, manipulate, couple and measure single microscopic systems facilitate the study of single quantum systems at the level of individual events. Such experiments address the most fundamental aspects of quantum theory. Indeed, quantum theory gives us only a recipe to compute the frequencies for observing events but it does not describe individual events, such as the arrival of a single electron at a particular position on the detection screen. Reconciling the mathematical formalism (that does not describe single events) with the experimental fact that each observation yields a definite outcome is often referred to as the quantum measurement paradox. This is the most fundamental problem in the foundation of quantum theory. In view of this, it is not a surprise that some of the most fundamental experiments in quantum physics have not been simulated in the event-by-event manner in which the experimental observations are actually recorded.

In this talk, we take the point of view that a physical theory such as quantum theory, is not much more than a specification of an algorithm to compute numbers that can be compared to experimental data. Thinking in terms of algorithms opens new possibilities to simulate phenomena for which a proper physical theory is not (yet) available. The event-based simulation method that we describe in this talk is not a proposal for another interpretation of quantum mechanics or an extension of it. We simulate quantum systems without making use of the rules that quantum theory provides. Our event-based simulation method rigorously satisfies Einstein's criteria of realism and local causality and builds up the final outcome that agrees with quantum theory event-by-event, just like in real experiments*. We show that our event-by-event simulation method reproduces exactly the results of quantum theory for single-photon Mach-Zehnder interferometer and Einstein-Podolsky-Rosen-Bohm experiments.

*H. De Raedt, K. De Raedt, and K. Michielsen, Europhys. Lett. 69, 861 (2005);
H. De Raedt, K. De Raedt, and K. Michielsen, J. Phys. Soc. Jpn. Suppl. 76, 16 (2005);
K. Michielsen, K. De Raedt, and H. De Raedt, J. Comp. Theor. Nanoscience 2, 227 (2005);
K. De Raedt, H. De Raedt, and K. Michielsen, Comp. Phys. Comm. 171, 19, (2005);
H. De Raedt, K. De Raedt, K. Michielsen, and S. Miyashita, Comp. Phys. Comm. 174, 803 (2006);
K. De Raedt, K. Keimpema, H. De Raedt, K. Michielsen, and S. Miyashita,
"Computer Simulation Studies in Condensed-Matter Physics XIX",
Landau D.P., Lewis S.P., Schuttler H.-B. (Eds.), Springer, Berlin (in press);
http://www.compphys.net/dlm

第16回

日時:8月7日(月)午後3時より (いつもと曜日が異なります。)

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:Christopher Mudry

講演タイトル:Universal Scaling Relations in Strongly Anisotropic Materials

講演要旨:
We consider the critical temperature in strongly anisotropic antiferromagnetic materials, with weak coupling between stacked planes, in order to determine the interplane coupling constant from experimentally measured susceptibilities. We present theoretical arguments for a universal relation between interplane coupling and susceptibility shown numerically by Yasuda et. al., Phys. Rev. Lett. 94, 217201 (2005). We predict a more general scaling function if the system is close to a quantum critical point, a similar relation for other susceptibilities than considered in Yasuda et. al., and the validity of these relations for more general phase transitions.

第17回

日時:10月26日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:丸山 茂夫(東大院工機械工学専攻)

講演タイトル:単層カーボンナノチューブの熱輸送に関する分子動力学

講演要旨:
 単層カーボンナノチューブの熱伝導率はダイヤモンドを超えるなどとの 実用的な期待がある一方,純一次元的な特異なフォノンの振る舞いによって, 見かけの熱伝導率の長さ依存性[1]が観察される.
熱伝導率の絶対値に関しては実験と計算との乖離が見られ, 熱輸送の物理の解明が急がれる.
実用的な長さのナノチューブにおいて,ほぼバレスティックなフォノン伝導となり, 熱伝導の非フーリエ効果が常温でも現れると期待されたり[2], 同位体による超格子構造における熱伝導率の特異な現象[3]などが予測される.
応用の面から重要なナノチューブと他の物質との界面熱抵抗なども含めて[4], 古典分子動力学法によるシミュレーションを通じて,単層カーボンナノチューブの熱輸送について議論する.
 単層カーボンナノチューブの合成や分光[5]におけるフォノンの影響[6]についても若干の議論をする.


文献:
[1] S. Maruyama, A Molecular Dynamics Simulation of Heat Conduction of Finite Length SWNTs, Physica B, (2002), 323, 193.
[2] J. Shiomi and S. Maruyama, Non-Fourier heat conduction in a single-walled carbon nanotube: Classical molecular dynamics simulations, Phys. Rev. B, (2006), 73, 205420.
[3] J. Shiomi and S. Maruyama, Heat conduction of single-walled carbon nanotube isotope superlattice structures: A molecular dynamics study, Phys. Rev. B, (2006), 74, 155401.
[4] S. Maruyama, Y. Igarashi, Y. Taniguchi and J. Shiomi, Anisotropic Heat Transfer of Single-Walled Carbon Nanotubes, J. Therm. Sci. Tech., (2006), submitted.
[5] Y. Murakami, E. Einarsson, T. Edamura and S. Maruyama, Polarization dependence of the optical absorption of single-walled carbon nanotubes, Phys. Rev. Lett., (2005), 94, 087402.
[6] Y. Miyauchi and S. Maruyama, Identification of an excitonic phonon sideband by photoluminescence spectroscopy of single-walled carbon-13 nanotube, Phys. Rev. B, (2006), 74, 35415.

第18回

日時:11月09日(木)午後3時より

場所:工学部6号館1階大会議室場所がいつもと異なります。

講演者:Mark A. Novotny
(Dept. of Physics and Astronomy, Mississippi State U
HPCC Center for Computational Sciences, Mississippi State U)

講演タイトル:Hysteresis and Dynamic Phase Transition:
simulations and experiments of multilayer magnetic structures

講演要旨:
The concept of hysteresis in thin magnetic films will be discussed, both the decades-old view and some of the required changes needed for ultra-thin film magnetic layers at finite temperatures. The existence of a Dynamic Phase Transition (DPT) in such hysteretic systems in the multi-droplet regime will be discussed. The DPT is an example of a non-equilibrium phase transition. Results of large-scale simulations to determine the universality class of the DPT for highly-anisotropic systems will be presented. In particular, scaling and finite-size scaling for the order parameter, both at zero applied field and for a non-zero bias field will be discussed. Recent experiments on ultra-thin multilayer magnetic structures will be described. The direct comparison between the simulations and the experiments provide evidence that a DPT has been seen experimentally in these magnetic systems.

第19回

日時:11月16日(木)午後3時より

場所:羽田野研究室 いつもと場所が異なります

講演者:Tomio Y. Petrosky (The University of Texas)

講演タイトル:A PROBLEM OF INFRARED DIVERGENCE IN KUBO FORMULA IN TERMS OF COMPLEX SPECTRAL REPRESENTATION OF LIOUVILLE OPERATOR

講演要旨:
比較的濃密度ガス系での輸送係数に対する久保公式の良く知られた赤 外発散の 問題をリウビル演算子の複素固有値表示に基づいて微視的な力学の立 場から 分析する。その結果、今までに知られていなかった非流体力学的モー ドの意外な 役割を見つけたことを報告する。

第20回

日時:11月30日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:高山一(物性研)

講演タイトル:磁場中イジングスピングラスが示すガラス的ダイナミックスに関する計算機実験

講演要旨:
平衡スピングラス相が磁場中で存在するか否かの問題は、スピングラス研究の当初 から論争が続いていて、未だに決着がついていない。このような基本的な問題の解決 を困難にしているのは、現実のスピングラス物質の緩和過程が低温できわめて遅くな り(ガラス的ダイナミックス)、実験室時間窓では平衡状態に到達できないことに ある。 そこで、計算物理的アプローチとしては、人為的に緩和を早める計算手法(例え ば、交 換モンテカルロ法)を採用し、問題解決を図るのが常道であり、既にそのような 研究結 果も報告されてるが、我々は、現実の実験と同じ観測過程を、基本的な理論模型 (Edwards-Anderson模型)に適用して調べてきた(計算機実験)。
 その結果、磁場シフトエイジング過程の計算機実験から、平衡スピングラス相が磁 場中では存在しないとの結論を導き[1]、また、磁場中冷却過程の計算機実験か ら、磁 場中冷却磁化が極めて特異な緩和、すなわち、磁化の値が交換モンテカルロ法で求め た平衡磁化の値へ向かうのではなく、その反対方向へ緩和することを明らかにし た[2]。 後者の結果は、磁場中冷却磁化の振る舞いに関する現実の実験結果と計算機実験結 果との対比から既に予想していたもの(J\"onsson-HT描像)とコンシステントであ る[3]。 これらの結果、描像について報告したい。

[1] H. Takayama and K. Hukushima: J. Phys. Soc. Jpn. 73 (2004) 2077.
[2] H. Takayama and K. Hukushima: to appear in J. Phys. Soc. Jpn., cond-mat/0610284.
[3] P. E. J\"onsson and H. Takayama: J. Phys. Soc. Jpn. 74 (2005) 1131.

第21回

日時:12月21日(木)午後3時より

場所:理学部1号館4階431号室

講演者:佐藤 昌利(物性研)

講演タイトル:バレー法 -虚時間経路積分形式によるトンネル効果の計算法-

講演要旨:
虚時間経路積分によるトンネル効果の計算法であるバレー法の解説を行なう。 経路積分によるトンネル効果の計算法としては、インスタントン法が良く知られているが、 実は、系の対称性が高い場合(2重井戸型ポテンシャル、超対称性のある場合など)を除いて 殆どの場合、WKB近似と結果が一致しない。 また、励起状態のトンネル効果は、インスタントン法では計算できない。 これらの問題が、経路積分空間の古典解(だけ)でなく、"谷"の配位を考慮すること(=バレー法)により 解決できる事をいくつかの簡単な模型で示す。 また、トンネル効果のある系では、摂動計算の漸近展開の係数が発散することが知られているが、 この発散の起源が、谷の配位で説明できることを示す。

第22回(1)

日時:1月18日(木)午後2時より(いつもと時間が異なります)

場所:工学部6号館セミナー室A(いつもと場所が異なります)

講演者:Zbigniew Struzik (School of Education, The University of Tokyo)

講演タイトル:Statistical physics of human heart rate in health and disease

講演要旨:
TBA

第22回(2)

日時:1月18日(木)午後3時半より(いつもと時間が異なります)

場所:工学部6号館セミナー室A(いつもと場所が異なります)

講演者:Motohisa Osaka (Institute of Gerontology, Nippon Medical School)

講演タイトル:Is it possible to predict cardiac sudden death?

講演要旨:
TBA

第23回

日時:1月25日(木)午後3時より

場所:工学部6号館セミナー室A(367号室)(いつもと場所が異なります)

講演者:Moo Young Choi 先生(ソウル大学)

講演タイトル:Stability and collective oscillations in a globally coupled rotors

講演要旨:
We study a system of globally coupled rotors governed by a set of Langevin equations. The corresponding Fokker-Planck equation is solved to yield a number of solutions in both the microcanonical and canonical ensembles. The stability of these solutions, which allow various degrees of cluster motion, varies differently with the temperature, disclosing the inequivalence between the two ensembles. Also discussed is the relation of the cluster motion and the dynamical order.