統計力学セミナー予定表 2010年度


連絡先: 齊藤圭司(saitohあっと spin.phys.s.u-tokyo.ac.jp)、 島田尚(shimadaあっと ap.t.u-tokyo.ac.jp)
宮下研究室伊藤研究室 (セミナー)| 藤堂研究室羽田野研究室 (セミナー)

これからのセミナー

日時 場所 講演者(敬称略) 講演題目

これまでのセミナー

日時 講演者(敬称略) 講演題目
1月11日 岡隆史(東大青木研) Dirac電子の物理: トポロジカル絶縁体、光誘起ホール効果
12月14日 田島裕康 3-qubit純粋状態のエンタングルメントの半順序構造
11月9日 観山正道(東京大学総合文化研究科) 剪断流下コロイド分散系の固液相転移近傍における臨界的振る舞い
11月05日 Salma Bedoui(LCC, Toulouse) Raman spectroscopic and optical imaging of high spin/low spin domains in a spin crossover complex
11月02日 Eric Vincent(CEA Saclay) Slow relaxations and noise in glassy systems
10月26日 森田悟史 断熱定理による量子アニーリングの性能評価
10月19日 齋藤圭司 加法原理予想についての考察
07/06 島田尚 Universal Aspects in Ecosystems and Simple Models
06/29 諏訪秀麿 詳細釣り合いを課さないマルコフ連鎖モンテカルロ法によるスピンパイエルス転移の研究
06/21 Cristian Enachescu Competition Between Photo-Excitation and Relaxation in Spin Crossover Compeles in the Frame of a Mechano-Elastic Model
06/15 Per Rikvold A new charging method for Li-ion batteries, suggested by Molecular Dynamics simulations
06/08 伊藤伸泰 Diversifying system (多様系)
06/01 松尾まり(原研) Quantum Nernst Effect in a Bismuth Single Crystal
05/25 荻津格 Is elemental boron boring?
05/18 諏訪秀麿 詳細釣り合いを課さないマルコフ連鎖モンテカルロ 法と跳ね返りのないワームアルゴリズム
05/13 宮下精二 Line shape and line width of quantum response
04/27 石坂香子 光電子分光で観る強相関系の低エネルギー電子構造
04/20 西松毅
(東北大学金属材料研究所)
feramコードによるBaTiO3強誘電体薄膜キャパシターのヒステリシス・ループの分子動力学計算
所属が書かれていない講演者は、宮下研、伊藤研、藤堂研の所属です。
過去のセミナー: 2009年度2008年度2007年度2006年度2005年度2004年度2003年度2002年度2001年度2000年度1999年度

第1回

日時:4月20日15時より

場所:理学部一号館447

講演者:西松毅(東北大学金属材料研究所)

講演タイトル:feramコードによるBaTiO3強誘電体薄膜キャパシターのヒステリシス・ループの分子動力学計算

講演要旨:
強誘電体薄膜は不揮発性ランダムアクセスメモリー (FeRAM) などに応用され、 その微細化が求められています。また、分極特性やヒステリシス・ループの膜厚 依存性(ナノサイズ効果)が強誘電体の基礎物性として実験と理論の両面か ら盛んに研究されているところです。強誘電体の分子動力学シミュレーションは 長距離の双極子間相互作用を含むために大規模な系を高速に計算すること が困難でした。また、強誘電体薄膜のシミュレーションでは強誘電体−電極界 面の構造に起因する反分極場をいかにして取り込むかが課題でした。そこでわ れわれはフォノンの逆空間での分散関係と高速フーリエ変換 (FFT) を巧妙に用 いた強誘電体薄膜の高速な分子動力学手法を開発しました。強誘電体をモ デル化した双極子相互作用をする擬スピン系のハミルトニアンを高速に時間発展 させます。フリーソフトウエアferamとして公開しています[1]。これにより、強誘電体 薄膜キャパシターのヒステリシス・ループのシミュレーションが実際的な規模(システム サイズ, 〜100nm)と時間(〜1ns)で可能になりました[2]。feramコードとそこで用 いられている物理を紹介するとともに、計算結果の例としてBaTiO3薄膜キャパシタ ーのヒステリシス・ループの分子動力学シミュレーションから得られた相転移温度T_C やcoercive field Ecの膜厚依存性、エピタキシャル成長に伴う圧縮応力依存性 についてお話します。
[1] http://loto.sourceforge.net/feram/
[2] Takeshi Nishimatsu, Umesh V. Waghmare, Yoshiyuki Kawazoe and David Vanderbilt:"Fast molecular-dynamics simulation for ferroelectric thin-film capacitors using a first-principles effective Hamiltonian", Phys. Rev. B 78, 104104 (2008), http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevB.78.104104 .

第2回

日時:4月27日16時半より

場所:工学部6号館セミナー室A

講演者:石坂香子

講演タイトル:光電子分光で観る強相関系の低エネルギー電 子構造

第3回

日時:5月13日時より

場所:理学部1号館447

講演者:宮下精二

講演タイトル:Line shape and line width of quantum response

講演要旨:
複素帯磁率などの吸収線形や幅についての以下の最近の研究について報告する。

(1)DM相互作用を持つ系での量子スピン系での高音極限での吸収線形
arXiv:1004.0839
Electron spin resonance in S=1/2 antiferromagnets at high temperature
S. El Shawish, O. Cepas, S. Miyashita

(2)Jaynes-Cummings modelのRabi振動スペクトル
arxiv.org/abs/1004.3605
         Magnetic strong coupling in a spin-photon system and transition to classical regime
         I. Chiorescu, N. Groll, S. Bertaina, T. Mori, S. Myiashita

(3)熱浴効果
Phys. Rev. E 81, 031131 (2010), Mizuhiko Saeki, Chikako Uchiyama,
Takashi Mori, and Seiji Miyashita
            Comparison among various expressions of complex admittance for quantum systems in contact with a heat reservoir
          Phys. Rev. E 80, 039901 (2009), Chikako Uchiyama, Masaki Aihara, Mizuhiko Saeki, and Seiji Miyashita
          Publisher's Note: Master equation approach to line shape in dissipative systems [Phys. Rev. E 80, 021128 (2009)]

第4回

日時:5月18日時より

場所:理学部1号館447

講演者:諏訪秀麿

講演タイトル:詳細釣り合いを課さないマルコフ連鎖モンテ カルロ法と跳ね返りのないワームアルゴリズム

講演要旨:
マルコフ連鎖モンテカルロ法は物理学に留まらず、統計学、経済学、バイオイン フォマティクスなど様々な分野で用いられており、一般的な統計的問題に 対して必要不可欠な手法となっている。任意の初期状態を平衡状態に収束させる ため、通常釣り合いの式とエルゴード性が要請されるが、これまでは釣り合いの 式の十分条件として詳細釣り合いを用いる場合がほとんどであった。我々は最 近、詳細釣り合いを課さずに釣り合いの式を満たす全く新しいアルゴリズムを考 案した。このアルゴリズムは、状態遷移の候補が与えられたとき、釣り合いの式 を満たす範囲で棄却率を最小化することができる。我々は4状態Pottsモデルにこ の手法を用い、臨界点直上で熱浴法の約7倍、メトロポリス法の約40倍緩和が速 まることを確認した。また量子モンテカルロ法のワームアルゴリズムに我々の手 法を用いることにより、ワームの跳ね返りを無くすことができる。この改良によ り、磁場中ハイゼンベルグ鎖において、従来の100倍以上緩和が速まることを確 認した。我々の手法は、一般のマルコフ連鎖モンテカルロ法に応用可能であり、 ほとんどの場合で緩和を速めることができる。発表ではこのアルゴリズムを説明 し、これらのモデルで自己相関時間を従来の手法と比べた結果について報告す る。

第5回

日時:5月25日16時半より

場所:工学部6号館セミナー室A

講演者:荻津格

講演タイトル:Is elemental boron boring?

第6回

日時:6月1日15時より

場所:理学部1号館447

講演者:松尾まり(原研)

講演タイトル:Quantum Nernst Effect in a Bismuth Single Crystal

第7回

日時:6月8日15時より

場所:理学部1号館447

講演者:伊藤伸泰

講演タイトル:Diversifying system (多様系)

講演要旨:
力学法則の単純さに比して、現実の世界は多様である。多様な 状態はどのように現われ、どのように維持されているのであろうか? この疑問に答えることを目指し、多様性を生み出し維持し続ける 系を「多様系(diversifying system)」と名付けて分析した結果を 報告する。 一口に多様系といっても、唯一のものがあるとは思われず、多様な 「多様系」があると思われる。地球上あるいは惑星上に見られる多様 な地形と、生物生態系の多様さとをともに論ずることは時期尚早で あろう。  本講演では多様系の研究の第一歩として、生物生態系の多様さを 念頭に議論する。種々の模型を使って生態系の進化ダイナミクスを 調べた結果、生態系の多様化には一定の法則が期待されることが 明らかとなった。特に統計的な特徴として、種の寿命分布が stretched exponential に従うという性質が明らかとなった。 この由来を明らかとするために、この性質をもつ最も簡単な模型を 「多様系のイジング模型」として提唱する[1-4]。  この分布関数はコンビニエンスショップの棚にならぶ商品の寿命の 分布にもみられることが指摘されており、生態系の多様性と経済 現象との共通点が明らかとなった[5]。 *本研究は、島田尚・村瀬洋介・Per Arne Rikvold各氏との共同研究に基づく。
[1]Yohsuke Murase, "Statistical-Mechanics Study on Community Assembly"
PhD Thesis of Graduate School of Engineering, The University of Tokyo (2010)
[2]Yohsuke Murase, Takashi Shimada, Nobuyasu Ito and Per Arne Rikvold,
"Effects of demographic stochasticity on biological community assembly on evolutionary time scales"
Physical Review E vol.81 (2010) 041908.
[3]Yohsuke Murase, Takashi Shimada, Nobuyasu Ito and Per Arne Rikvold,
"Random walk in genome space: A key ingredient of intermittent dynamics of community assembly on evolutionary time scales"
Journal of Theoretical Biology vol.264 (2010) p.663.
[4]Yohsuke Murase, Takashi Shimada and Nobuyasu Ito,
"A simple model for skewed species-lifetime distributions"
to appear in New Journal of Physics (2010),
[5]Takayuki Mizuno and Misako Takayasu,
"The statistical relationship between product life cycle and repeat purchase behavior in convenience stores"
Prog. Theor. Phys. Suppl., vol.179 (2009) 71-79.

第8回

日時:6月15日15時より

場所:理学部1号館447

講演者:Per Arne Rikvold (Florida State University)

講演タイトル:A new charging method for Li-ion batteries, suggested by Molecular Dynamics simulations

講演要旨:
Based on large-scale molecular dynamics simulations, we propose a new charging method that should be capable of charging a lithium-ion battery in a fraction of the time needed when using traditional methods. This charging method uses an additional applied oscillatory electric field. Our simulation results show that this charging method offers a great reduction in the average intercalation time for Li+ ions, which dominates the charging time. The oscillating field not only increases the diffusion rate of Li+ ions in the electrolyte but, more importantly, also enhances intercalation by lowering the corresponding overall energy barrier.

第9回

日時:6月21日14時より

場所:理学部1号館447

講演者:Cristian Enachescu

講演タイトル:Competition Between Photo-Excitation and Relaxation in Spin Crossover Compeles in the Frame of a Mechano-Elastic Model

講演要旨:
In this communication, we use a recently proposed elastic model in order to study the competition between linear photo-excitation and cooperative relaxation in spin crossover molecular magnets. The difference in molecular size between the two possible spin states, that is, the high-spin and the low-spin state respectively, induces distortions of the crystal lattice. These determine the elastic interactions between molecules, treated here as connecting springs that are either compressed or extended from their equilibrium length, thus modulating the local probability for the high-spin → low-spin relaxation. The crossover of individual molecules within the lattice is checked by a standard Monte Carlo procedure. Using very simple assumptions and a minimum number of parameters, photo-excitation curves and hysteresis loops under continuous irradiation below the thermal transition temperature can thus be simulated. The formation of clusters is analyzed and the presence of inhomogeneities in the system is investigated.

第10回

日時:6月29日16時30分より

場所:工学部6号館セミナー室A

講演者:諏訪秀麿

講演タイトル:詳細釣り合いを課さないマルコフ連鎖モンテ カルロ法と跳ね返りのないワームアルゴリズム

講演要旨:
マルコフ連鎖モンテカルロ法は物理学に留まらず、統計学、経済学、バイオイン フォマティクスなど様々な分野で用いられており、一般的な統計的問題に 対して必要不可欠な手法となっている。任意の初期状態を平衡状態に収束させる ため、通常釣り合いの式とエルゴード性が要請されるが、これまでは釣り合いの 式の十分条件として詳細釣り合いを用いる場合がほとんどであった。我々は最 近、詳細釣り合いを課さずに釣り合いの式を満たす全く新しいアルゴリズムを考 案した。このアルゴリズムは、状態遷移の候補が与えられたとき、釣り合いの式 を満たす範囲で棄却率を最小化することができる。我々は4状態Pottsモデルにこ の手法を用い、臨界点直上で熱浴法の約7倍、メトロポリス法の約40倍緩和が速 まることを確認した。また量子モンテカルロ法のワームアルゴリズムに我々の手 法を用いることにより、ワームの跳ね返りを無くすことができる。この改良によ り、磁場中ハイゼンベルグ鎖において、従来の100倍以上緩和が速まることを確 認した。我々の手法は、一般のマルコフ連鎖モンテカルロ法に応用可能であり、 ほとんどの場合で緩和を速めることができる。発表ではこのアルゴリズムを説明 し、これらのモデルで自己相関時間を従来の手法と比べた結果について報告す る。

第11回

日時:7月6日15時より

場所:理学部1号館447

講演者:島田尚

講演タイトル:Universal Aspects in Ecosystems and Simple Models

講演要旨:
時空間的に大きなスケールでの生態系の性質は、物理学も含む幅広い分野の注 目を集めてきた対象である。実地や化石の研究からは過去の大絶滅や種数変動、 食物連鎖網や系統樹の構造などにおける特徴的なパターンが報告される中で、そ れらの各々のパターンの由来や意味については独立に議論されることが多かった。 統計力学的視点に立てば、これらの異なった側面での普遍的パターンは多種が共 存・相互作用しあう同一の系の特徴としての理解が望まれるが、多種が共存する 系の好適なモデル構築の難しさもあり研究は不十分であった。  このような状況に対し我々は、簡単かつ新しいポピュレーションダイナミクス モデルを提案して研究を行ってきた。具体的には、種間の相互作用項をそれに関 わる種の個体数の特徴的スケールに依存しない型にするべきことが重要である。 こうして得られる時間発展方程式にシンプルな絶滅と新種導入のルールを導入す ることによって、モデル系は現実の生態系の記述に足るような豊かな種数と相互 作用構造を持つ状態へと時間的に発展できる。さらに興味深い事に、種の絶滅の パターン、種の寿命分布、食物網の構造、種毎の個体数のランクサイズ分布等の 異なるいくつもの統計則が観測値と良い一致を見せる事が分かった。この結果は、 個別に議論されて来た問題が簡潔な共通の起源に依るものである可能性を示すも のである。  一方で、提案したモデル系を出発点とする正統性についてと、得られた統計則 が一致することの意義についての批判は残る。このため、我々は特に種の寿命分 布に注目して全く異なる簡単なモデル群を解析し、観測されている特徴的な`` skewed profile’’の再現のために重要な系の性質(新規導入種が既存種と相関を 持たない事)を見出した。  以上の結果は、(ハミルトニアンを出発点とした通常の物理の問題等と異なる) 今回の様な問題に取り組むにあたっての、「できるかぎり簡単な単一のモデルで 多くの結果の再現をはかること」と「異なるモデル間で、ある様相がどれだけ維 持されるかを検討すること」の2方向にそって行きつ戻りつするという正攻法の 重要性を示す例であるとも考える。

第12回

日時:10月19日15時より

場所:理学部新1号館447号室

講演者:齋藤圭司

講演タイトル:加法原理予想についての考察

講演要旨:
非平衡定常状態における加法原理予想についての考察をする。

第13回

日時:10月26日14時より

場所:理学部新1号館913号室

講演者:森田 悟史

講演タイトル:断熱定理による量子アニーリングの性能評価

講演要旨:
量子アニーリングは,量子揺らぎを用いて解探索を行う最適化問題 の汎用量子アルゴリズムである.最小化したい関数をポテンシャル エネルギーと見なし,人工的に導入した温度を調節することで最適 解を探索する焼き鈍し法の量子版として提唱された.量子アニーリ ングでは,量子力学的な運動エネルギーにより量子揺らぎを導入す る.トンネル効果によりエネルギー障壁を透過できるので,準安定 状態からの脱出を可能にしている.一方で,量子アニーリングのプ ロセスは,運動エネルギーの自明な基底状態からポテンシャルの基 底状態への断熱遷移と捉えることもできる.そのため量子情報の分 野では,量子断熱時間発展などの別名で呼ばれることもある.本発 表では,断熱遷移の考えを元に,最適解を見つけるための必要条件 や誤差を改善する手法について紹介したい.

第14回

日時:11月2日15時より

場所:理学部新1号館447号室

講演者:Eric VINCENT(ervice de Physique de l'Etat Condens.ANi, CEA Saclay, France)

講演タイトル:Slow relaxations and noise in glassy systems

講演要旨:
In this talk, we shall recall the main experimental features of slow dynamics and noise in spin glasses, in comparison with some other glassy systems (polymers, gels, liquid crystals..) [1,2]. All these systems, although very different in nature, present by some aspects (aging phenomena) a common behaviour which is due to their out-of-equilibrium situation. For equilibrium dynamics, the dynamical response function (relaxation after a field change) and the autocorrelation of the fluctuations (spontaneous noise) are related by the well-known Fluctuation-Dissipation Relation (FDR). For out-of-equilibrium situations, a theoretical extension of FDR has been proposed [3], which allows the definition of an "effective temperature". In comparison with results from spin glasses, we shall review some of the numerous experiments which have recently explored the applicability of an extended FDR to various glassy systems.

[1] see references in E. Vincent, Lecture notes in Physics 716 7-60 (Springer-Verlag, Berlin, 2007), also accessible at http://arxiv.org/abs/cond-mat/0603583 .

[2] D. Herisson and M. Ocio, Phys. Rev. Lett. 88, 257202 (2002); D. Herisson and M. Ocio, Eur. Phys. J. B 40, 283 (2004).

[3] L.F. Cugliandolo and J. Kurchan, J. Phys. A 27, 5749 (1994); L.F. Cugliandolo, J. Kurchan, and L. Peliti, Phys. Rev. E 55, 3898 (1997).


第15回

日時:11月5日15時より

場所:理学部新1号館447号室

講演者:Salma Bedoui(LCC, Toulouse)

講演タイトル:Raman spectroscopic and optical imaging of high spin/low spin domains in a spin crossover complex

講演要旨:
Bistable molecular materials displaying vibronic lability, such as spin crossover systems, offer an interesting playground to study the coupling between electronic and lattice degrees of freedom and associated phase transition phenomena. Understanding the spatio-temporal aspects of the spin state change in these systems seems to be the key to control the switchable properties. Using optical microscopy and various contrast methods we have investigated the spatio-temporal development of the two-step spin transition in single crystals of the [Fe(bapbpy)(NCS)2 ] complex. Nucleation and growth of domains displaying different molecular spin states were directly inferred from Raman spectroscopic images Fig1.b. The high-temperature transition proceeds by nucleation at macroscopic defects, followed in most cases by anisotropic single-domain growth. The development of elastic strain and associated birefringence are proved by polarized light measurements Fig1.a. The low-temperature transition is accompanied by the onset of twinning, which leads to a particular multi-domain growth mechanism [1].
[1] S. Bedoui et al. / Chemical Physics Letters 499 (2010) 9499

第16回

日時:11月9日13時より

場所:理学部新1号館933号室

講演者:観山正道(東京大学総合文化研究科)

講演タイトル:剪断流下コロイド分散系の固液相転移近傍における臨界的振る舞い

講演要旨:
我々は非平衡現象を探求する上での具体的な系として、剪断流下の単分散 コロイド分散系に着目し、特に、流れが存在する状況での秩序の発現に ついて、数値計算を通して研究を進めている。

コロイド分散系は適切な平衡条件の下で、コロイド粒子が規則的な粒子 配置を取る、いわゆる、コロイド結晶と呼ばれる状態を取る。我々の研究 の出発点は、この結晶状態が剪断流下でどのような振る舞いをするか? 一見、互いに矛盾するように思われる「流れ」と「秩序」は共存しうるのか? という問いである。

実際、先行研究では、数値計算・実験の両面から、剪断流下でも何らかの 結晶的秩序が存在することが示唆されている。しかし、剪断流下において、 秩序状態、無秩序状態は相として特徴付けられるのか?あるいは、相転移の ようなものを定義できるとして、それは平衡の一次相転移と比べて、どのような 違いがあるか?など、未解明の問いは多い。

本発表では、コロイド分散系の結晶性秩序の特徴付けから始まり、現在までに 得られた剪断流下における結果について述べたい。主要なメッセージとしては、 剪断流下のコロイド分散系では、平衡相転移点近傍で臨界的な振る舞いが 観られる、というものである。また、これらの結果を踏まえた、現在、進行中の 話題、今後の展望なども議論させて頂きたい。

文献: arXiv:1010.1411

第17回

日時:12月14日15時より

場所:理学部1号館447号室

講演者:田島裕康

講演タイトル:3-qubit純粋状態のエンタングルメントの半順序構造

講演要旨:
3-qubit純粋状態|Ψ〉から|Ψ'〉への成功確率1のLOCC変換が可能である為の必要十分条件を与えた。この条件は、2者間のエンタングルメント指標であるコンカレンスと、3者間のエンタングルメント指標であるタングル、それにもうひとつの位相因子をあわせた5つのエンタングルメント指標を用いて表される。 ここから、3-qubit純粋状態全体の集合には、成功確率1のLOCC変換の存在によって規定される半順序構造が入る事、それらはエンタングルメントの5つの指標で表される事が明らかとなった。 これはNielsenが1999年に2者純粋状態で示した事の3-qubitへの拡張となっている。 さらに、上記必要十分条件は、エンタングルメントがLOCC変換でどう変化するかの法則を与える。これはエンタングルメントの移動と散逸として表現できる。 この移動には不可逆性があり、ここから3体のエンタングルメントは2体のエンタングルメントよりも高級な物である事がわかった。 さらに、任意の成功確率1のLOCC変換に対して、それを実現する最小回数が何回であるかも明らかにした。これはHorodeckiらが1998年に2者に対して行った研究の拡張になっている。

第18回

日時:1月11日15時より

場所:理学部新1号館447号室

講演者:岡隆史(東大青木研)

講演タイトル:Dirac電子の物理: トポロジカル絶縁体、光誘起ホール効果

講演要旨:
最近固体物理においてDirac電子と関連した物理が注目を集めている。例えばトポロジカル絶縁体もDirac電子の持つ性質の延長上に理解することができる。本講演ではこれらの性質について紹介した後、円偏光を用いて電子状態を制御する方法について議論する。